口腔癌について① ― 基礎知識と早期発見の大切さ


「癌(がん)」という言葉は、多くの人にとって身近でありながら不安を抱かせる存在です。そもそも癌とは、体の中の細胞が本来の役割を失い、異常に増殖してしまう病気です。細胞の増殖には本来「増えるタイミング」「止まるタイミング」という制御が働いていますが、この仕組みが壊れてしまうと無限に増殖を続け、周囲の組織を壊したり血液やリンパを通じて他の臓器に転移したりします。これが「癌」の基本的な特徴です。

そのなかでも、口の中にできる癌を「口腔癌」と呼びます。口腔癌は、舌・歯ぐき・頬の内側・口の底(舌の下の部分)・口蓋(上あごの天井部分)など、口腔内のさまざまな場所に発生する可能性があります。日本では年間で約8,000人以上が口腔癌と診断されており、近年増加傾向にあるといわれています。喫煙や過度の飲酒、不衛生な口腔環境が主なリスク要因とされており、男性に多くみられますが、近年では女性の患者さんも増えています。

口腔癌の厄介な点は、初期症状がとても分かりにくいことです。たとえば「口内炎」と間違われることがあります。通常の口内炎であれば1〜2週間ほどで自然に治りますが、口腔癌の場合はいつまでも治らず、むしろ悪化していくことがあります。特徴的なサインとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 2週間以上治らない口内炎や潰瘍
  • 口の中に硬いしこりや白い斑点がある
  • 出血しやすい、痛みが強くなってきた
  • 入れ歯が当たりにくくなった、噛み合わせに違和感が出てきた

これらは「よくある口内トラブル」と誤解されやすく、受診が遅れてしまうことが少なくありません。しかし、口腔癌は早期に発見できれば非常に高い確率で治癒が期待できます。逆に、発見が遅れると治療が大がかりになり、生活の質(話す、食べる、飲むといった基本的な機能)に大きな影響を及ぼすことになります。

口腔癌の早期発見のためには、定期的な歯科検診日常的なセルフチェックが欠かせません。歯科医院では虫歯や歯周病だけでなく、口腔内の粘膜に異常がないかどうかも確認します。患者さんご自身も、鏡で舌や頬の内側を観察し、「治らない口内炎」「原因不明の違和感」を見逃さないことが重要です。

歯科医師が「念のため」と思えば口腔外科や大学病院を紹介することもあります。大切なのは「少しおかしいかも」と感じたときに早めに相談することです。もし何事もなければ安心できますし、万が一異常が見つかっても早期に対処することで将来の生活が大きく変わります。

口腔癌は「珍しい病気」ではなく、誰にでも起こりうるものです。だからこそ、「早期発見・早期治療」が何より大切です。歯科医院での定期チェックが、あなたの命と生活を守る大きな一歩となります。 当クリニック(番町オーラルサージャリーデンタルクリニック)は、口腔外科としての専門性を活かし、口腔癌の早期発見・診断・治療に力を入れています。小さな違和感でもお気軽にご相談ください。