私たちが「無理な治療を勧めない」理由

歯科医院に対して、「行ったらすぐに治療を始められてしまうのではないか」「断りづらい雰囲気なのではないか」と、不安を感じている方は少なくありません。とくに口腔外科という言葉から、抜歯や手術といった大がかりな治療を想像し、受診をためらってしまう方もいらっしゃると思います。

私たちは、そのような不安をできる限り感じさせない診療を大切にしています。なぜなら、お口の治療において本当に重要なのは、「早く何かをすること」ではなく、「正しく状況を見極めること」だと考えているからです。

お口の状態は、患者さん一人ひとりで大きく異なります。同じような症状に見えても、年齢や生活習慣、これまで受けてきた治療、さらには今後どのようなお口の状態を望んでいるかによって、最適な対応は変わってきます。そのため、診察を行った結果として、「今は積極的な治療を行わない」という判断になることも、決して珍しいことではありません。

無理に治療を進めてしまうことで、かえって患者さんの負担が大きくなってしまうケースもあります。例えば、今すぐ処置を行うことで歯や顎への侵襲が増え、将来的な治療の選択肢を狭めてしまうこともあります。また、治療による変化が、患者さんの生活スタイルや価値観に合わない場合もあります。

私たちは、治療を始める前に「なぜその処置が必要なのか」「今でなければならない理由はあるのか」を自分自身に問い直すようにしています。口腔外科では、判断を急がないことが結果的に安全につながるケースも多く、慎重な見極めがとても重要です。

治療には必ずメリットがある一方で、リスクや注意点も存在します。私たちは、良い点だけを一方的にお伝えするのではなく、考えられるデメリットや他の選択肢についても丁寧に説明することを心がけています。そのうえで、患者さんご自身が納得し、安心して判断できることが何よりも大切だと考えています。

歯科医院は、「来たら必ず何かをされる場所」ではなく、「不安や疑問を安心して相談できる場所」であるべきです。すぐに結論を出さなくても構いません。初診の段階では、治療を決めることよりも、状況を正しく知ることを目的に来院していただいて構わないと考えています。

まずは今感じている違和感や不安をお話しください。その対話の中から、患者さんにとって最も無理のない、納得できる選択を一緒に考えていきたいと考えています。