
歯の治療をしていると、どうしても費用が高額になってしまうことがあります。特にインプラントや入れ歯の治療、また外科的な処置などでは、患者さんから「思っていた以上に費用がかかってしまった」という声をよく耳にします。そんなときにぜひ知っておいていただきたいのが、高額療養費制度と医療費控除です。少しややこしい仕組みではありますが、うまく活用することで経済的な負担を減らすことができます。
高額療養費制度というのは、ひと月にかかった医療費が大きな額になった場合に、自己負担の上限を超えた部分が払い戻される制度です。健康保険が適用される治療が対象になりますので、歯科の分野では例えば親知らずの抜歯や入院を伴う口腔外科手術などがこれにあたります。所得に応じて上限は異なりますが、一般的な方であれば八万円前後が目安とされています。つまり十万円かかったとしても、あとから差額が戻ってくることがあるわけです。あらかじめ健康保険組合に申請しておけば「限度額適用認定証」というものが発行され、窓口で支払う時点で高額な負担を避けることもできます。
もう一つ知っていただきたいのが医療費控除です。こちらは確定申告の際に利用する制度で、1年間に支払った医療費が十万円を超えるときに、その超過分を所得から差し引くことができます。そうすると結果的に税金が安くなり、還付金として戻ってくる可能性があります。歯科治療の場合、保険診療はもちろん、自費診療でも医療的に必要とされる治療であれば対象になります。例えばインプラントや入れ歯、虫歯や歯周病の治療は医療費控除の対象ですし、通院に使った公共交通機関の交通費も含めることができます。ただし、美容目的のホワイトニングや、見た目を整えることだけを目的とした矯正治療などは対象外ですので注意が必要です。
患者さんにとって分かりにくいのは、高額療養費制度と医療費控除の違いかもしれません。高額療養費制度はその月ごとの医療費の上限を超えた分が戻ってくる仕組みで、対象は保険診療に限られます。一方で医療費控除は、1年間の合計で判断し、保険診療と一部の自費診療も含めることができます。歯科では自費の治療が多いので、どちらかといえば医療費控除のほうが身近に利用できる制度かもしれません。
実際に制度を利用するためには、領収書を必ず保管しておくことが大切です。治療費の領収書だけでなく、薬局で購入した薬のレシートなども対象になる場合があります。また、通院のための電車やバスの交通費も控除に入れることができますので、しっかり記録を残しておくと良いでしょう。ご家族の医療費も合算できますので、年間でまとめて計算すると意外に金額が大きくなることもあります。
歯科治療はお口の健康を守るために欠かせないものですが、どうしても費用面で心配になる方が多いと思います。そんなときにこのような制度を知っておくだけでも、少し安心して治療を受けていただけるのではないでしょうか。当院でも、治療の際にこうした制度についてご質問をいただくことがあります。その場で税務的な詳細な判断はできませんが、一般的な情報としてお伝えすることは可能ですし、不安な方には税務署や専門家に確認していただくようご案内しています。
番町オーラルデンタルクリニックでは、口腔外科やインプラントなど高度な治療も行っております。費用面でご不安がある場合にも、こうした制度をうまく利用しながら、安心して治療に臨んでいただければと思います。どうぞお気軽にご相談ください。